ポーランド選挙2007

ここからは時事ネタですので、難い話です。イヤな方はさよーならーー。






















僕が度々興味を示してきた、ポーランド情勢です。
mixiにほぼ同じ論文を書きました(携帯対応でもしかしたら読みづらいかな?)。
今週結果の出たポーランドの下院選挙について、最終的にまとめます。


まずは、語句の説明から。

・PIS:中道右派政党「法と正義」のこと。党首はヤロスワフ・カチンスキ
  旧「連帯」が分裂してできた。解散の時点で与党の中心。政策は、以下の通り。
  ・経済:貧富の差是正(累進課税の累進を強化)
  ・外交:独自路線、EUとは距離を置く、ユーロには消極的
  ・軍事:イラク派兵継続、MD推進派
  ・他:大統領の権限強化を計る。保守的だが、財政等では社会主義的。
・PO:中道右派政党「市民プラットフォーム」のこと。党首はドナルド・トゥスク
  旧「連帯」が分裂してできた。解散の時点で、最大野党。政策は以下の通り。
  ・経済:15%の定率税制によって、外国資本を呼び込みやすい制度を作る
  ・外交:親EU派、ユーロにはやや距離を置く
  ・軍事:イラク派兵部隊は条件次第で撤退(来年中頃)、MDは推進派
・LiD:左派政党連合「民主左翼連合」のこと。ポーランド共産主義独裁をしていた
  統一労働者党が分裂し、民主左翼連合(SLD)
  (ここからさらに社会民主ポーランド(SdPl)が分派)、労働同盟(UP)が出来る。
  2005年までは「連帯」から政権奪取し、民主党と連立与党を組んでいた。
  しかし2005年の総選挙で敗退し、上記4党が政党連合を組む。
  現在は共産主義ではなく、北欧型社会民主主義
  政策は、福祉・社会保障重視、軍事的にはイラクからの撤退・MD慎重派、親EU・親ユーロ。
・PSL:農民党のこと。統一労働者党の衛星党である統一農民党と、「連帯」の農村部門が
  合体して出来た。党首は、首相を務めたこともあるパブラク
  支持基盤は農村中心で、若年層には人気がない。
・自衛:農村労働組合「自衛」。PSLとは対立する。支持基盤は農村中心だが、
  都市部にも勢力を伸ばす。ポピュリストと評され、高学歴者には人気がない。
  解散の直前まで、PiSと連立与党を組んでいた。
・LPR:カトリック右派政党「ポーランドの家族連盟」のこと。政策的には、
  伝統的なカトリック社会への回帰、EUから距離を置き、ポーランドの独自性を維持する。
  最近では、死刑制度をめぐって、死刑廃止EUと対立している。
  解散の直前まで、PiSと連立与党を組んでいた。
・「連帯」:ポーランドの自主労働組合ポーランドでは、共産主義の下、労働紛争は
  起こらないものとされ、官制労働組合があるだけだったが、これに対し実質的な
  労働組合として成立し、度々弾圧されてきた。
  ポーランド民主化の中心的役割を担い、1990年にはワレサ大統領が誕生する。
  しかし、政権奪取後に経済の低迷と汚職があり、旧統一労働者党のSLDとUPに
  議会の多数派を奪取される。
ポーランドの大統領権限:ワレサ大統領の時、議会の多数派となったSLDとUPの指名する
  首相を大統領が承認せず、組閣させなかったため、政界が混乱した。
  ワレサは首相職を代行したが、結局これが大統領に権限を与えすぎることを
  危険視することになり、新憲法では大統領は国の象徴的存在とされた。
  議会と大統領が対立する際は、大統領は一度拒否権を使用できるが、
  その後は議会の賛成多数ならば議会が優越する。



今回、解散・選挙に至ったのは、与党PiS議員の汚職と、それに伴い連立与党の「自衛」と
LPRが連立を解消し、PiSだけでは少数与党となることからでした。
最大野党のPOとも協議し、解散に合意しました。
僕は、旧「連帯」の2党が、時間をかけ過ぎて左派に政権が戻る最悪の事態だけは
避けたかったのではないかと推測しました。
ポーランドの経済状況は、JETROの前回選挙(2005年)と今回(2007年)の数値で比較します
(統計は前年分です)。

経済的には、一定の数値を出していますので、及第点です。
では、与党の、カチンスキ大統領含め、支持率低下の理由は何でしょうか?
考えられるものを箇条書きにすると、

  1. PiSの汚職
  2. 大統領と首相を双子が占めることへの警戒感
  3. 大統領選挙時に「双子独占はしない」と言ったことを破った不信感
  4. 独自路線を採ったことでヨーロッパから距離感ができた(特に隣の経済大国ドイツから)
  5. イラク派兵問題(撤兵派が多い)
  6. アメリカのMDに関わることへの疑問

こんなとこでしょうか。5.と6.は、POはほぼPiSと同じ意見、LiDは反対意見でした。
4.は、POとLiDはPiSと反対です。
4.は連立与党から離れたとはいえ、LPRの主張と近いものです。

選挙の結果を、議席数(得票率)で表します。

 投票率:52.6%←前回40.57%
※LiDの得票率は、連合している4党の合計。ポーランドでは、単独では5%
(連合だと7%)以下の得票率だと議席が配分されないため、このような数値となっている。


経済が良いこともあり、PiSの票も伸びています。
これを見ると、前回の選挙時は「入れる政党が見当たらない。どこ入れても同じ」という、
投票率&分散傾向でしたが、今回は「旧『連帯』系で行こう。あとは実績あるとこ」という
選択が見られたと思います。投票率の向上と、2大政党への得票集中ですね。
PSLは、本来投票率が上がれば特定支持基盤なだけに弱くなるところ、伸びていますから、
支持が広がっていると解釈できます。
LPRの敗北は、あまり独自路線を取り過ぎることを敬遠したものと判断できます。
以上から、上記支持率低下問題のうち、1.2.3.はともあれ、4.が争点だったと考えます。
5.6.は不満がありながらも、現実路線を選択したかな、と思います。


さて、POは過半数を得て議会運営をスムースに進める為に、PSLと連立を組みます。
そのPSLのパブラク党首は、日本の共同通信のインタビューで、イラク撤退について
イラクの治安安定がまず必要で、責任ある方法で撤退すべきだ。
 ポーランドの内政問題としてではなく、イラクや米国と協議して決める問題だ」
と、どっかの政党の党首に聞かせてやりたいくらい、まっとうなことを言っています。
この党と親EUのPOが組みますから、対外的には安定した外交が見込めます。
減税(上程恩恵が大きい)による経済活動・投資の活発化も見込めます。
一方で、日本風に言うなら格差拡大と、グローバリズムに巻き込まれて
独自性の喪失の危険性もあります。農民の代弁者であるPSLにとって、
あまり農村が疲弊するような政策を採られたら反発するでしょうから、
ここがネックかもしれません。


僕は、PiS=新保守主義=安倍政権 PO=新自由主義小泉政権 っぽいかなと感じました。
実際にはちょっと(かなり?)違いますが、同じ中道右派といわれながらも、
国営企業の民営化に対する態度が重なりますし、外国資本に国内を開放する考えも
似ていると感じました。ゆえに、今後のポーランドで起こりうることは、
小泉政権時代の日本から予測可能かな、とも思っています。
ポーランド選挙ネタは以上で終了!!
独断過ぎる意見展開にお付き合い頂きありがとうございました。
今後も気がむいたらポーランドネタ書きます!!