フランス大統領選挙

 選挙そのものより、昨日のNHKの特集についてですかね。
サルコジ、ロワイヤル両大統領候補が、いずれも過去に日本に否定的な発言をしたことを取り上げ、
現在の親日派シラク大統領から政策が一転する、日本のアニメが受け入れられなくなる、という内容でした。
解説の大学教授(フランスが専門)やJETROの専門家はもっと深い分析を持っていると思いますが、
番組としてはちょっとツッコミ入れたくなる内容でした。
 解説の教授が言っていたことですが、サルコジの「日本より中国が好き」「東京は息が詰まる」
「相撲は愚か者のスポーツ」等は、親日家の大統領への対抗で出た発言で、深く考える必要はないでしょう。
ロワイヤルの「日本のアニメは暴力的」も、あちこちで出ている批判なので、彼女が反アニメの急先鋒のような
捉え方は間違っています。ミッテラン大統領時代の日仏摩擦も、時代が違うといえばそれまでです。
現在の日本企業は、フランス内に工場を作り、フランスに雇用をもたらしているため、現在では
「フランスから工場を他国に移転する」という噂だけで地元の議員が「撤回せよ」とハンストをする時代です。
そういう意味では、サルコジ、ロワイヤルどころか、国民戦線のル・ペンが大統領になっても、
経済的には大きな影響はないと僕は分析します(ル・ペンは「外国人は出ていけ。但し日本人除く」と言ってます)。
 現在という視点で見るならば、フランスの対日・対中国の配分が問題となるでしょう。
親日家と言われるシラク大統領だって、盲目的な日本愛好家などではなく、必要と思えば日本の反感など無視して
核実験をしてますし、中国への武器禁輸を解除しようと目論んでいますし、日本の新幹線輸出(日本は消極的だが)に
自国のTGVをぶつけて真っ向対立したりしています。その際のネガティブキャンペーンはすごいですよ。
シラク大統領は、趣味としての親日家であり、政治家としては極めてリアリストです。フランスを第一に考え、
その上で日本と友好を保とうと考えています。それを後押ししているのに、趣味は影響しているかもしれません。
さて、日本より中国を取る政治家が大統領になった場合、フランス単独よりも、仏中共同での行動が要注意です。
外交的な友好が経済関係に良影響を与え、その恩恵が対日関係の悪化によるデメリットより大きいと考えれば、
フランスは中国の対日外交に肩入れするでしょう。どちらが有益か、天秤にかける際、大統領が選ぶスタッフの
性格が影響を及ぼすと考えます。スタッフ選抜には、その政治家のスタンスが影響します。ゆえに、
大統領候補の対日・対中感覚が、実際のとこはどうなのかが、日本が見るポイントでしょう。
 対日、だけで見ましたが、フランスの大統領選挙なので、フランスをどうしたいかを考えないとダメですよね。
フランスをどうしたいか。ひいては、域内大国のフランスがEUにどのような影響を与えるか。
現在のフランスの状況は、JETROのホームページから引用すると

  • 実質GDP成長率:1.2%
  • 消費者物価上昇率:1.8%
  • 失業率:9.8%(26歳未満の失業率:22.1%)

という状況です。僕が過去にフランスについて書いたのは、以下の通りです。

今と芸風が違ったり、ロワイヤル候補が全く眼中になかったりしてますが、読み返して考察してみると、
・若者の失業率をどうするか(移民問題とも絡む。移民の若者の失業問題というのがある)
 →付随して、国歌公務員扱いの労働組合との労使問題にどう取り組むのか
・ユーロ高をどう捉えるか。金融的に自由が少ないユーロの中で、どうフランスが振舞うのか。
アメリカとの関係をどうするのか。
この下が、NHKが取り上げた「対日関係はどうなる?(対中との絡みは?)」でしょうね。
アニメを取らずとも、重要な3点だけで日本や世界に影響が及ぶと思います。
(結論:フランス大統領選挙の結果、対日関係がどうなるかは1対1の関係だけ見ちゃ読めないよ→NHKさん)


おまけ:今まで散々中国、反日について書いてますが、単純に反中国感情のみで片付ける気はありません。
 あそこの国は、計算づくで「それが有利」と見れば反日をしますが、不利とみれば知らん顔するでしょう。
 フランスと組んでの対日外交は、反日に限らず、友好が必要と見たらフランス経由で親日外交に転ずる可能性も
 あると思っています。盲目的に親中・嫌中で見ず、何が有益かを見る必要がありますね。理想論ですが。