リボンの騎士・ネタ補遺

前回の積み残しを(妄想からは外れてます)。


【王を死に至らしめた毒は?】
考察方法;
・時期:中世ヨーロッパでも使用されていたこと
・死因:毒が塗られた剣が皮膚をかすめた際に血液に混ざった
・症状:数秒程度で胸を押さえて倒れた。痙攣や嘔吐、精神混濁はなかった
・その他:鉄製の剣が腐食し、青さびを生じていた
→少量で即効性の猛毒、しかも金属腐食がある。
 結論から言えば、青酸系の毒物だと思います。精神障害が見当たらなかったので、
アルカロイド系ではないと考えました(あと、金属腐食能力からも)。
ただ青酸だと、呼吸障害を起こす(ヘモグロビンと結合し、機能を止める呼吸毒なので)
のですが、王は割りとあっさり死にました。また、死ぬ時間も早かったので、
青酸は有力な候補だとする程度に留めておきます。


【ヘケートが渡した薬は?】
 王妃にサファイアの出生の秘密を暴露させた→自白剤に他ならないのですが、
問題は、中世に自白剤は存在しない、あるいは記録が見つけられない、ことです。
自白剤は、第一次世界大戦頃に開発されたものと記憶してます。
ところで王妃は、気分の高揚(高笑い)や脱力して倒れるといった症状を示していました。
可能性として考えられるのは、自白剤に使われたことがあるアトロピンを飲ませ、
さらに幻覚作用のあるシロシビンやシロシンを摂取させたものかと。
アトロピンはナス科ベラドンナ(中東から欧州に分布)、シロシビンやシロシンは
毒キノコ(日本で言うならワライタケ、もっと言うならマジックマッシュルーム)から
取れますので、ヘケティの時代でも入手可能です。摂取して時間をおいて薬効が出ましたし、
それに先立って胸を押さえていたため、呼吸不全・心不全を起こすキノコ毒の性質とも
合致しています。問題は、さっさと薬効がなくなったことですが、まあこれは
花岡青洲並(マンダラゲから麻酔を作ったが、一歩間違うと毒になるため、患者の体力等を
勘案し、絶妙の配合をしたと考えられてます。ゆえに、一般的な調合がなく、麻酔は秘伝)の
調合能力をヘケティが有していたと考えるしかないですね。
 実は魔女とされた人たちの中には、有能な民間医師や化学者がいた(それが異教徒だったり、
ロマ民族だったり、人付き合いがなかったりで誤解された)という話もありますし。
まあ、吉澤大臣が、熱燗で薬を飲ませなくて良かったですね。場合によっては、アルカロイド系の
薬が分解して薬効を失った可能性もあったので。


【魔女ヘケートの悲しみ】
 手塚治虫原作には触れないとしながら、今回の話題は微妙にリンクさせます。
手塚原作では、ヘケートの上に魔王がいて、その命令で動いていたります。
また、原作には天上界で魂が生き方を決められる場面もありません。
原作を知る人からすれば、大きく設定が変わったのが、リボンの騎士theミュージカルなわけです。
しかし、僕は手塚治虫的な世界観を、ここからも感じ取ったので、それを書きます。
 手塚治虫作品の中に「火の鳥」があるのはご存知でしょう。火の鳥には永遠の命を与える力が
ある、それゆえに権力者がそれを求めたり、望んでもいない命を与えられ苦しんだり、
死んでも過去の因果から同じ苦しみを続ける、等の内容があります。
ヘケティは、
川釻o釻)「永遠の命は、永遠の孤独と知った♪」
と歌っていて、彼女の行動の目的は「永遠の命によって、死ぬことがなく、愛した男は全て先にいなくなる
魔女を捨て、人間の魂を得ることで、限りある命の人間になりたい」というものでした。
火の鳥・未来編」で、全ての生物が絶滅した地球にあって、命の再生を託され、永遠の命を授けられた
マサトは、最初の5000年で何度も自殺を試みてますし、孤独を紛らわそうとロボットを作ったりしています。
彼もまた、愛する女性(人間ではなく、寿命500年の不定形生物ムーピーだが)を先に失い、
その面影をずっと追い続けながら数十億年たった一人で生きた(生かされた。最後は肉体も失ったが)
わけです。ここまで行かなくても、ヘケティはその業に苦しみ、永遠の命など捨てたいと思ったのでしょう。
 しかし、こんなにヘケティを苦しめた業って何なんでしょう。天上界で、魂を授けられたモノに
もう一つ魂を飲ませた首謀者は、後に大臣になる魂です。ヘケ魂はあの時点で見てただけです。
ここは僕が疑問に思っている部分ですが、妄想を伴う解決はせず、ヘケティを苦しめる業は天上界に起因、
ただそれだけとします。神(箙さん)が「魂の物語」と〆たのですが、この魂たちは数百年後に再び
めぐり合い、モーニング娘。となる設定です。魂の輪廻、繰り返される人生、これも火の鳥的な世界観ですね。
 原作では、妖精チンクのいたずらが全ての始まりで、ヘケティが生まれ変わって藤本美貴になる設定など
あるはずがありません。「リボンの騎士」は手塚治虫が1953年に書き、ここで引き合いに出した「火の鳥」は
1954年から描かれ始め「未来編」は1967年の作、手塚治虫が1989年に死亡して「火の鳥」は未完、そして
2006年に木村信司氏によってモーニング娘。出演のミュージカルに。時系列を見ても、既に手塚治虫
この世にいなく、「リボンの騎士」に「火の鳥」の影響があるわけもなく、ある意味木村氏が演出の都合で
チンクを省略したわけなのですが、それらがなぜか別な意味での手塚色をつけたというのは、
僕の感想に過ぎませんが、不思議な気がします。チンクを出して、アレに全てを押し付ければ、魂の物語には
ならなかったと思いますから。また、魔王の両親がいたら、ヘケティの孤独さもなかったと思います。
そして、魂の物語(火の鳥的な人生の輪廻)が、最後の娘。の歌に(少々強引ながらも)
つなげられたわけですから。設定って、面白いなと思います。


今日は妄想少なめでまとめました。今回の方が、前回よりは観戦レポに近いものになったのは、
ツッコミ無用でお願いします。