ポーランド総選挙’07

久々に時事ネタを。
僕が個人的にずっと見ている、ポーランドの政局。
まず、日本語のニュース紹介をします。



次に、過去に僕が書いたポーランド政局関係の過去ログを載せます。



続いて、僕がmixiの方に今日書いた記事をそのまま引用。

今回の結果だけ見れば、どういう経緯でこうなったか分からないので、
前々回の選挙からおおまかな流れを書きます。


まず、与党の「法と正義」(以下、PiS)と最大野党の市民プラットフォーム(以下、PO)は、
元々はワレサ元大統領の「連帯」でした。これが、一時共産主義勢力(統一労働者党)に
政権奪取された時に分裂したものでした。
旧統一労働者党もまた、民主左翼連合(以下、SLD)と労働同盟(以下、UP)に分裂したものの、
前々回は政権を奪取していて、連立与党となっていました。このSLDから36人が分派・下野して
出来たのが、社会民主ポーランド(以下、SdPl)でした。民主党(以下、PD)は、
議席を持っていませんでしたが、前々回の左派連立内閣では首相を出していました。
この4つが、左派と言っていいでしょう。
右派としては、農民労働組合の「自衛」(ポピュリストと評される)と
ポーランドの家族連盟」(以下、LPR)がありました。価値観的には、
キリスト教保守派、伝統的な家族主義といったとこです。
他に農民党(以下、PSL)があります。不勉強により、どっち寄りかは分かりませんが。

前回の選挙で、旧「連帯」のPiSとPOは連携し、左派の連立与党に勝利しました。
しかし、大統領選挙を巡って両党は対立しました。PiSのカチンスキ党首は
「双子の弟が大統領になったら、自分は(与党党首でも)首相にはならない」
と大統領選挙時には言っていたものの、実際に弟が勝つと首相になりました。
この約束違反も、PiSが人気を下げた一因でしょう。
PiSとPOは、同じ「連帯」系でも、
・PiS:対外独自路線 経済は貧富のバランスを取る累進課税の累進強化
・PO:親EU 経済は15%の定率税制として外国資本を呼び込む
こういう違いがありました。共同で選挙戦を戦っている最中でも、PiSはPOを
「金持ち優遇」と批判し、POはPiSを「無策」と罵っていました。
一方、敗れた旧与党勢力ですが、この度再結集して左派民主主義者(以下、LiD)という
政党連合を立ち上げました。とはいえ、前回の選挙で議席は SLDの56議席(全体の11.32%)
しかなく、得票率もSLD(11.32%)+UP(2.41%)+SdPl(3.89%)+PD(2.45%)= 20.06%
しかありませんでした。
右派の方ですが、EUから距離を置く政策とキリスト教的価値観が合致し、PiSと自衛、
LPRは連立与党を組みました。PiSの得票率は26.99%だったので、単独では政権を組めず、
右派の2党と組んで46.37%としました。POは得票率24.14%でした。


さて、やっと今回の結果です。結果といっても、まだ全部開票してないようですが。
ポーランドの選挙は、比例代表制です。ゆえに得票率を書いています。
一定の率に達しない場合、議席は割り振られません。
さて、結果ですが、
・PiS:27.0%→30.4% (+3.4%)
・PO:24.1%→43.7% (+21.6%)
・LiD:20.0%→13.3% (-6.7%)
・PSL:7.0%→7.2% (+0.2%)
この結果を踏まえて、POのトゥスク党首は、PSLと連立を組むようです。
PiSとの大連立はなく、LiDは不倶戴天の敵ですからね。
PSLはノーマークだったので、政策とか調べてなく、後で調べます。


さて、敗戦といわれる与党PiSも、実は得票伸ばしていたりします。
旧統一労働者党は、再結集したにも関わらす、逆に得票率を低下させました。
しばらくは、旧「連帯」の流れでいいと判断したのでしょう。
根拠として、JETROから引用した経済数値を出します。
前回選挙(2005年)と今回(2007年)の数値で比較します(統計は前年分ですが)。
・失業率:19.1%→14.9%
GDP成長率:+5.3%→+6.1%
物価上昇率:+3.5%→+1.0%
PiS政権も何気に頑張って、経済を好転させています
GDP成長率は去年の数値は悪かったですが)。
選挙結果は、外交では「ドイツに第二次大戦のことを補償しろとか喧嘩売らないで、
もっとEU(特にドイツ)と仲良くすれば景気がもっと良くなる」、経済では
国営企業の民営化に消極的なPiSより積極的なPOが良い」、
それと「双子政権ではちょっと独裁的。大統領の権限強化をしたがっているのも危険」
という心理が働いたものと僕は考えました。


結論:大枠はこのままでいい、細部ではPOの主張でやってみよう、
 旧統一労働党の出番はない、ですね。


課題:ノーマークだったPSLについて調べよう。


おまけ:PiSは、旧統一労働者党関係者を公職から追放してるんですよね。
これも、LiDが負けたことに影響してるかもしれません。




  ----コメントから----
・PiSはイラク派兵継続、POはイラク撤退派。2年前はともにイラク戦争支持。
・PiS、POともにMD(PAC-3配備)は積極的。
・POの方が、アメリカ他からの投資呼び込みには積極的。



そして、追加情報ですが、下院ではPiSの汚職があり、「自衛」とLPRは連立を脱退して
いました。この汚職も、特に都市部でPiS支持率が低かったことからも、敗戦に
大きく影響していますね。
それでも、旧「連帯」の2党がなんだかんだで支持率を伸ばしているので、
経済の好調は思った以上に評価されているものと思います。
かつては、「連帯」が共産主義国家を打倒したものの、暮らしが良くならず、
「これだったら共産時代の方がマシだ」と、旧勢力の政権奪還につながりましたからね。
その後「やっぱり共産主義でもダメだ」となって、旧「連帯」の政権再奪取となり、
それに比べれば2年とはいえ実績残したということですね。


政権交代をマスコミは使いたいだけかもしれませんが、今回交替した2党は元々仲間なわけで、
旧統一労働者党に政権が移ったのとは意味が違うということは書いておきます。