また選挙ネタ
娘。たちには嫌われそうですが、ネタが投入されちゃいましたので・・・・。
ポーランドで選挙が行われました。
まずは、ポーランドとはこういう国。
先に結果を見ましょう(直前情報もあり)。
ポーランドで政権交代へ 選挙、右派野党が勝利宣言 産経新聞
経済、株価、ビジネス、政治のニュース:日経電子版 日本経済新聞
ポーランド、再び「連帯」系政権へ 読売新聞
ポーランド総選挙 与党大敗、中道右派政権誕生へ 朝日新聞
ポーランド下院選、野党勢力が大差でリード=出口調査 ロイター
ポーランド大統領と首相、双子が独占も 選挙結果次第で
英語
Solidarity heirs drub left in Polish vote-polls Reuters
ポーランド語
Panstwowa Komisja Wyborcza ポーランド選挙管理委員会
Gazeta Wyborcza ポーランドの新聞
Gazeta Polska ポーランドの新聞
Gazeta Prawna ポーランドの新聞
TELEWIZJA POLSKA ポーランドのTV
以前のエントリに習って項目分け(順番は編集)。
選挙への経緯:総選挙(任期満了)
ポーランドは大統領(象徴)と首相(実質)がいます。かつて英雄・ワレサがお痛*1をやったので、大統領権限は制限されました。
現在の首相は、マレク・ベルカ(女性)(男性でした。すみません)です。こんな紆余曲折で首相になりました。当然弱いです。
千奈美に、2005年5月9日の記事ですが、ベルカ首相は一回辞表を出してます。
もう「選挙管理内閣」のような位置づけのようです。
(小泉首相のような)主導権なんて発揮できません。
歴史に詳しい人には
川o・-・)つ「ワレサ大統領か、懐かしいな。そいえば前に『連帯』っていなかった?」
と思う人もいるでしょう。
連帯は、政権取得後に、路線の対立と汚職・腐敗から分裂しました。
んで、冷戦時代のポーランド政治を担った統一労働者党の
流れを組む現与党が、前回41%の票を獲得して先祖帰りを起こしました。
ごりごりの共産主義ではなく、最近流行りの北欧型社会民主主義になっていますが。
問題点
・凶悪な失業問題(EU内最悪)
・政治家の汚職と国民からの信頼失墜
・EUに加盟。しかしイラク問題ではアメリカと強調し、EU主要国の独仏と対立
・WW2でドイツに不信感。先日もドイツに戦争責任を求める下院決議が採択
・ユーロ導入の是非
・首相の権力が弱体
選挙制度:ドント式の比例代表制←この時点で、先日の日・独・NZ
(小選挙区・比例代表並立/併用制)との単純比較はできません。
争点:はっきり言って経済対策です。
→政党毎の政策です
(党名から政策の傾向が読めないのが多く、こんなん調べました。ったく・・・・)、
元記事です。
与党 :民主左翼連合=SLD 労働同盟=UP
野党1:法と正義=PiS 市民プラットフォーム=PO
野党2:自衛 ポーランドの家族連盟=LPR
泡沫 :民主党=PD
あとはここ参照。
野党1と2の違いは、1は勝ったら連立するとこで、2は1と無関係なとこです。
野党1は、元々ポーランド民主化運動で活躍した「連帯」が分裂したものです。
ゆえに、以後野党1は旧「連帯」と呼び、単純に「野党」というのがその他にします。
自衛というのは農民労働組合ですが、ポピュリスト政党とばっさり切られてます。
自衛とLPRは、反EUは一致でも、労組と愛国カトリック集団でまとまれるかどうか・・・・。
面白いのは、現首相は議会に議席のない民主党に属していることです。
だから載っけたんですけどね。
※ポーランド政党へのリンク集(探せば英語があるので、適当に訳しませう)
(PiSはリンク切れてましたな。っつーわけで、PiS参照)
肝心の経済政策ですが、
与党:金持ち増税。公共投資と福祉拡大。その資金はEUからもらおう
連帯:国営企業の民営化も制限すべき@PiS 民営化がしがしやるべし!社会保障は減らす@PO
野党:社会保障をしっかり!金?知るか!@自衛
社会的弱者の保護。外資流入、西欧企業による国営企業買収に反対@LPR
うーーーん・・・・正直、どこもこれだ!という策を持ってませんねえ。
まあ、ポーランド語しかないサイトは、当方の語学力不足のため、読解が浅いんですけど。
PiSは経済オンチと言われてますし、そのPiSは仲間のはずのPOを「金持ち優遇」と言ってます。
連立すんでしょうに・・・・。
外交政策です。対EUは出ている通りですので、対アメリカを見てみます。
ポーランドはイラク派遣部隊の撤退を表明しています。これはSLDの判断です。
一方のPiSとPOは「条件次第で延長しまっせ」と言ってます。
ヨーロッパの中で明確にアメリカを支持し、部隊まで派遣したことで、
アメリカからの出資が大幅に増えるという恩恵を受けているため、これも経済と結びつくかも
しれません(もっとも国民は出兵には反対してますが)。
対日はこの際問題になりませんので。
■追加■
・ポーランドでは下院の力が強く、「大統領と下院で十分」という上院不要論があります。
PiSはさらに大統領権限の強化、POは上院廃止の早期憲法改正を考えています。
・税制では
PiS=累進課税の累進制強化←貧富のバランスを取れる
PO=15%の定率←外国資本を呼びやすい
と対立しています。
・EU憲法については、PiSとPOはともに「懐疑・ニース条約で十分」派だそうです。
・ユーロ導入については、SLD=2007年頃、PiS=2015年以降、PO=2010年以降 としています。
↑↑↑↑ ここまで ↑↑↑↑
おいら的政党分類マトリックス。これに宗教性を入れれば三次元になりますが、
面倒なのでしません。
親EU | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
SLD | SdPL | | |
PD | |||||
UP | | |
PO | ||||||
| |
||||||||
左派 | ←−−−−−−−−−−−−−−−→ | 右派 | ||||||
PSL | | |
PiS | ||||||
| |
||||||||
自衛 | ↓ |
LPR | ||||||
独自路線 |
連立が予定されているPOとPiSは結構かけ離れているような・・・・・。
この両党は「大選挙区の比例代表制→単純小選挙区制にする」と選挙制度改革で一致してます。
選挙制度改革を変えるための憲法改正には、両党で下院の3分の2の議席が必要です。
NEW POもEUやユーロに懐疑的な面があったため、親EU度を下げました。
千奈美に、PiSとPOは10月の大統領選挙では対立しまくってます。PiSのJaroslaw Kaczyński党首の双子の弟
Lech Kaczyński氏とPO党首のTusk氏が出馬しています。PiSが第一党になれば、双子の兄の方が首相となります。
タッちゃんカッちゃんならぬ、ヤッちゃんレフちゃんが首相と大統領を独占となれば・・・・・。
川o・-・)「南ちゃんはいないんだ・・・・」
既にこの両者や、ワレサのおイタで縮小された大統領権限を強化(復元)することを明言してます。
(かつてヒトラーは、首相と大統領を兼任し、総統になった。まあ今回、双子とはいえ別固体ですが)
てなわけで、下院選挙結果次第で、大統領選挙にも影響が出ます。双子独占を嫌うのか、
Tusk氏有利も最近Lech氏が追い上げてますし、兄は「弟が大統領なら自分は首相辞退」と
言ってます。どうなるでしょう(予測はしません)。
Lech Kaczyński氏(兄は同じ顔)
Tusk PO党首
経済状況
まずわ比較表(相手は日本とEU内のドイツ)
失業率 | GDP成長率(年) | 物価上昇率(年) | 所得税 | 消費税率 | 寸評 | |
---|---|---|---|---|---|---|
ポーランド | 19.1% | +5.3% | +3.5% | 19〜40% 3段階 | 22% (食料7%) | 最悪 |
ドイツ | 9.6% | -0.1% | +1.0% | 25.9〜53% 方程式 | 16% | 深刻 |
日本 | 4.2% | +3.3% | -0.2% | 10〜50% 5段階 | 5% | 回復基調 |
詳しくはここ参照。
わお!見ましたか、失業率19.1%って数字。ありとあらゆる数字で経済が深刻といわれるドイツより悪い数字を叩き出してます。
インフレ率が高いのですが、GDP成長率がそれより高いので、辛うじて物価高騰とはなっていないようです。
所得税もドイツよりは低いので、定職についている人は生活できるでしょう。
しかし、年金生活者や失業者は、物価上昇と消費税の高さから生活しづらいでしょうね。
(郵政は国営なので、触れません。ツッコミ用にとりあえず言及)
結果
投票率:40.17%
党名 | 獲得数(%) | |
---|---|---|
旧「連帯」 | PiS | 152(26.8%) |
PO | 133(24.2%) | |
与党 | SLD | 56(11.4%) |
野党 | 自衛 | 57(11.7%) |
LPR | 33(7.9%) |
投票率:40.57%
党名 | 下院獲得数(%) | 前回下院獲得数(%) | 上院獲得数 | 上院前回 | |
---|---|---|---|---|---|
旧「連帯」 | PiS | 152(26.99%) | 44(9.5%) | 49 | 15 |
PO | 133(24.14%) | 65(12.68%) | 34 | ||
与党 | SLD | 56(11.31%) | 184→148 | 3 | 75 |
UP | 0(2.41%) | 32 | 0 | ||
野党 | 自衛 | 57(11.41%) | 53(10.2%) | 4 | 2 |
LPR | 33(7.97%) | 38(7.87%) | 19 | 2 | |
PSL | 27(6.96%) | 42(8.98%) | 0 | 4 | |
SdPl | 0(3.89%) | -→36 | 0 | - | |
PD | 0(2.45%) | - | 0 | - | |
ドイツ少数民族 | 2(-%) | 2 | - | - |
※上院・下院ともに2議席が不明(さっさと情報出せ!)
※ドイツ少数民族政党の場合、5%足きりが適用されない
※今回の最終情報源
分析
最初から「負けるだろう」と言われていたとこが、予想通り負けました。
「こんなに勝ったの?」の日本や、「なんで均衡すんだよ!」の独・NZとは違い、鉄板です。
むしろ「『自衛』より少ない」の方が驚きなくらいです。
結局、「『革命なったけど経済悪化したし与党は汚職。昔の方がいいや』→革命前への回帰」が、
「『革命前に回帰したら経済さらに悪化したし与党は汚職。連帯の方がいいや』→連帯へ回帰」』
ってことでしょう。次回の選挙時に『連帯回帰したけど・・・・』とならなければいいのですが。
野党の方だって経済政策として特効薬を持っているわけではありませんから。
旧「連帯」も、改憲に必要な3分の2は取っていません。が、事前の予測議席から見てもそれは
考えられず、むしろ予測よりも多い議席を取ったのですから御の字です。改憲には、他の政党も
巻き込む必要があります。目的は小選挙区制導入ですから、比例ゆえに生き残れる小政党は
反発するでしょう。しばらくは現状のまま続くと考えられます。つまり、小政党乱立。
PiSとPO間も、経済問題での刷り合わせは難しそうです。大統領選挙での対立もありますし、
PiSなんて選挙中に既に味方のPOのネガティブキャンペーンをしてました。
早々と支持率低下の可能性もありますね。
EUに対する「No」という回答・・・いくつかの日本のメディアでありましたが、
ここの争点の主なのは「経済をどうするか」ですので、EU問題を云々と言うのは
「日本の民主党敗北は『年金・福祉問題で民主党案が否定された』のが主たる理由」という電波と
同じようなもんだと思います。オランダやフランスでの「EU否定」は「EU憲法の批准」が
判断基準だったからなので。
投票率は・・・・・日本人の僕に言わせて下さい。「低い!!」
ポーランド国民も、かつての日本国民のように
「どこ入れりゃいいねん」状態だったのかもしれませんね。
川o・-・)∩「結論出す前に、推測が多すぎます! もっと精査して下さい」
結論
「国民に利益を与えるなら勝たせる」の裏、「国民に損失を与えた党は落とす」が発動した。
これは、低投票率が示すように、どこからも明るい未来を示す政策が明示されなかったため。
汚職・スキャンダルもこれに拍車をかける。
以上!
川o・∀・)「なんとかすっきりまとまった!」
余談
現地のサイトだったり、日本語のメディアを読んでいて、つっこみたいとこ
思ったことがいくつかあったので、列挙します。
・「ウクライナの民主化を支援」と公約に書いてましたが、プーチン兄貴は怖いぞ。
おイタが過ぎないように。
・「モルドヴァの民主化・・・」だからプーチン兄貴は怖いってば!
・ポーランドのサイト、妙なポップアップが多い!うざ!
・「中道右派の両党だけで約300議席を占め」と書いた日経さん、
足したら285なんですが・・・・。
→すみません、上院と足したら368議席になりました。
・この与党総崩れの状況、日本の野党やマスコミが最も期待していた状況なんだろうなあ。
・おいらのパソコン、「ぽーらんど せんきょ」と変換すれば「ポーランド 占拠」と出る。
ナチシンパか?
NEW 新聞・テレビ、サイトの更新遅いよ! 何やってんの!(ブライト・ノア口調)
NEW ポーランドのサイトは、最後が.plなもんで、Perlプログラムがひっかかった・・・。
NEW やっぱ双子の兄貴は首相辞退だってさ。 弟を立てる・・・カッちゃん存命時のタッちゃんだ
お詫び 上で訂正してますが、ベルカ首相は男性でした。間違ったこと書いて申し訳ありません。
→誰と間違えたんだろう・・・・
*1:現憲法では、首相選出で大統領が内閣を承認・発足させ、議会の承認がまた必要という独特の体制になっている。つまり、大統領と議会に、それぞれ任命と承認という一定の権限を与え、一方でいずれかが意識的にサボタージュすれば他方が何らかの手段を行使し、独走を許さないしくみになっている。これは、1990〜1995のワレサ元大統領時代、大統領と議会との関係が悪化した際、大統領は首相候補をなかなか出さず、議会は信任を与えず、内閣が長期にわたって発足できない状況が続き、国政の停滞を招いた経験に基づいている。 「http://www.emb-japan.pl/seiji/belka_proced.htm」より引用