選挙まとめ
ちょっと某所より
「君、語学得意だったよね。ちょっと海外が日本の選挙をどう見てるか、
近く行われるドイツの選挙はどうか分析してちょうだいな。
なに、素人さんの意見も欲しいんでねえ」
という依頼があり、
「だったらドイツと同じ時にニュージーランドも選挙しますから、それも加えたらどうすか?」
と言って、ちょっとしたレポートを作成してます。
そしたらニュージーランドの情報が集まらず、面倒なことに・・・・・。
このバイトで、この前の検査・治療費は取り戻せましたし、コンサのチケ代稼げましたので
文句はないっす。僕は政治学だの経済学だの統計学だのの専門家じゃないですから、
上っ面を撫でるだけの分析しかしませんが、ここにも載せておきますわ。
(某所への提出内容とは別モノ)
でわ、まずは各国の選挙制度から。
日本:小選挙区比例代表並立制
小選挙区制と比例代表制を並立して行う選挙制度。
衆議院の総定数480人を、小選挙区制で 300名、比例代表制で180名選出する。
有権者は小選挙区選挙では候補者に、比例代表区選挙(全国11ブロック)では政党に投票する。
小選挙区の候補者は同時に比例ブロックでの政党の名簿登載者となることができる
(重複立候補)。
1994年(平成6)、公職選挙法改正により採用。また、2000年2月同法改正で
比例定数が200から180とされた。
ドイツ連邦議会(下院、基本定数598)の選挙は、小選挙区と比例代表の「併用制」。
日本の衆院などの小選挙区比例代表「並立制」とは比例代表の在り方が異なり、
総議席数の配分を比例代表で決定する。
有権者は299小選挙区(定数1)で候補者に、比例代表で政党に1票ずつ投票。
比例代表の得票率によって決まる
各党議席配分数を小選挙区の獲得議席数が上回る場合もあるが、その場合、
小選挙区の議席は「超過議席」として認められ、総議席数が定数を上回ることになる。
(産経新聞)
かなり詳しい説明はここ参照。
ニュージーランド:小選挙区比例代表併用制
国会(1院制)の基本定数は120。小選挙区比例代表併用制で、有権者は小選挙区(69議席)で
候補者、比例区(51議席)で政党を選ぶ。小選挙区のうち7選挙区は先住民マオリによって
選ばれる。比例区の得票率に応じ全120議席をまず、各党に比例配分する。
この配分議席数を各党の小選挙区の獲得議席数が上回った場合、その議席は「超過議席」
として有効と見なされる。従って総議席数が定数を上回る場合がある。
(ウェリントン共同)
政治風土についてはここ参照。
選挙制度自体は似てます。細かい差異は、
日本は、小選挙区用の定数と比例用の定数はバラバラ。両方の合計数が、党の議席数。
独逸とNZは、比例で全議席数が決まります。が、小選挙区の結果次第で定数オーバーします。
なんでこんな方式取っているかは、興味ある人各自調べてちょ(書くとさらに長くなる)。
次に争点です。
・日本:郵政民営化(与党主流派:賛成 野党:反対(?) 泡沫←旧与党主流派:反対)
・独逸:失業問題
(与党:労働市場、社会保障の構造改革 野党:企業負担軽減、競争力重視による雇用改善)
・NZ:税制改革
(与党:低・中所得世帯向けに所得税還付 野党:約3100億円の包括的な所得税減税提案)
他にも色々ありますが、ざくっと切りました。
(日本の野党、この場合民主党の「?」は、
賛成派+各論反対派+公社維持派+完全反対派 でまとまってないからです)
選挙に至る経緯です。
・日本:与党自民党の分裂→総理大臣による解散・総選挙(与党:小泉首相主導)
・独逸:首相への不信任→否決されるが、解散・総選挙
(与党:シュレーダー首相主導と、いえないこともない)
・NZ:通常の総選挙(前回は2003年)(与党:クラーク首相は何もしてない)
日・独はいちかぱちかの勝負に打って出ました。どっちかと言うと、シュレーダー首相の方が
追い詰められてます。
(直前の補欠選挙だったかで、与党の候補が負けてますし、この時点で支持率は低下してました)
では、各国の問題点を列挙します。
日本
・国の深刻な財政赤字+赤字国債
・官僚に対する根深い不信感
・与党自民党と小泉首相が乖離→反対派追放により解消
・投票率の異常な低さ
・近隣諸国(2ch風に言えば特定アジア)との外交・安全保障問題
ドイツ
・ワイマール時代以来の深刻な失業問題
・対アメリカの外交問題
・旧西ドイツと旧東ドイツでの経済格差、対立
・外国人労働者の流入と、それに対する反発(ネオなっち)
・与党不利だが人気のシュレーダー首相と、野党メルケル党首の不人気
(所得税25%発言が痛い)
ニュージーランド
・非核政策による対アメリカ外交の悪化(軍事的には壊滅、経済的には行き詰まり)
・クラーク首相は人気→しかし不祥事も出てきて、「変化が必要」という声も
・福祉政策(先住民族マオリへの優遇廃止を野党は公約に)
んなとこですか。NZについて補足。クラーク首相は女性です。
面白いのは、どの国も主要政党は「改革が必要」と訴えていますし、首相は3人とも
個人的人気は高いです。
経済状況です。
その前に、日本もドイツもNZも、人口や産業構造や通貨の力が全然違いますから、
単純な評価はできないことをエクスキューズしときます。あと、数字が全てではないことも。
ま、参考程度に。
資料は、日本はここ、他は三菱商事ネットワークを使用しました(時期は2005年6月現在)。
失業率 | GDP成長率(年) | 物価上昇率(年) | 所得税 | 消費税率 | 寸評 | |
---|---|---|---|---|---|---|
日本 | 4.2% | +3.3% | -0.2% | 10〜50% 5段階 | 5% | 回復基調 |
ドイツ | 9.6% | -0.1% | +1.0% | 25.9〜53% 方程式 | 16% | 深刻 |
NZ | 4.3% | +3.3% | +1.5% | 19.5〜39% 3段階 | 12.5% | 好調 |
これまでが悪化だったため、よく見えるだけです(数字のマジック)。
ドイツはこの状態が数年続いているので、結構深刻です。
NZはずっとこんな調子で、物価上昇率(インフレ)が気になる程度です。
税金については、日本は「増税(今は上げないけど将来はね@税調)」、
独&NZは「減税!」となるのもなんとなくわかりますね。
日本を「小さい政府にする@小泉内閣」と言う主張ですが、数字だけなら今でも
十分に小さい政府なんです。
「福祉が不足」だの「財政赤字」てのは、結局のとこ税金取ってないからでしょう。
「払う気起きねえよ」という国民の気持ちはわかるので、政府をさらに
(っつーか利権多すぎですから)リストラして「払っても無駄遣いされるさ」という
言い訳は通じなくするんでしょうね。上で書きましたが、この状況のドイツで
「所得に関係なく、所得税は一律25%!」という
野党の経済大臣候補キルヒホーフ発言は支持率を下げさせるわけですよ
(上に有利で、下は0.9%しか変わらない)。
金融については略! わからん! というより、ドイツがユーロ圏の1つなため、
1国での比較にならないんですよ。
上の表がどれもこれも比率(%)なのは、そういうわけです。物価とか出しても、
為替相場で変わりますから比較対象になりません。
特に僕の好きな為替ネタでは。まあ、Bloomberg.co.jp: マーケットとかどっか外資系銀行のレポ読んで下さい。
(なんちゅー無責任な。千奈美に僕は、NZドルを好んで買ってます。金利が美味しいので)
ついでに、この3カ国の郵政民営化について書きましょう。
実施年 | 内容 | 結果 | 評価 | |
---|---|---|---|---|
日本 | 2007年(?) | 郵便・貯金・保険・窓口の4分割民営化 | ? | ? |
ドイツ | 1990年 | 郵便・電子通信の民営化 | ・元々郵便は民間に委託していた ・国際物流に展開し、世界4大ネットワークに | 成功 |
NZ | 1987年 | 郵便・貯金・通信の3分割民営化 | ・店舗:1244→885 ・職員:1万2千→7千 ・郵便局に銀行が戻る | 失敗 |
身売りしまして、その後国営キウイ銀行が郵便局内で業務を行うようになり、
擬似郵貯となったわけです。
それと、成功例のドイツは、DHLのサイト参照のこと。
結果です。
連合は、現在連立を組んでいるとこです。日本は、野党=民主党+社民党にしたかった
とこですが、民主党が「自分だけで政権取る!」
と言ってたので尊重しときました。「泡沫」は表現は悪いですが、他にいい表現はないと
思いましたので、断固使います。
与党連合 | 与党獲得数(%) | 野党連合 | 野党獲得数(%) | 他(泡沫) | 他獲得数(%) | |
---|---|---|---|---|---|---|
日本 | 自由民主党 公明党 | 327(68.1%) | 民主党 | 113(23.5%) | 共産党 社民党 国民新党 新党日本 新党大地 | 40(8.3%) |
ドイツ | 社会民主党(SPD) 緑の党(Grünen) | 273(44.5%) | キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU) 自由民主党(FDP) | 286(46.7%) | 左派党(Linke) | 54(8.8%) |
NZ | 労働党 | 50(40.7%) | 国民党 | 49(39.6%) | ニュージーランド第1党 緑の党 革新党 統一未来党 マオリ党 | 21(19.7%) |
※NZは、在外投票分がまだ残っている。
でわ、分析しましょう。
まず否定から。
・小泉首相の人気がすごい。岡田代表は不人気→ドイツもシュレーダー人気でメルケル不評、
NZもクラーク人気でこれだが。
・経済好調の場合、与党に有利→NZもここ数年景気はいいが、与野党均衡しちゃった。
・小選挙区制度の怖さが出た!→かつてナチスが躍進したのは、比例代表でしたが・・・・。
・小選挙区比例代表並立なんておかしい!→ほお!独逸とNZに喧嘩売るんですね。
えー・・・・既存の意見に対するツッコミ以上はやめます。
色々考えましたが、客観性がなかったので(ぼそっ)。
数字だけ見て書きます。
日本:自民大幅増 民主大幅減
独逸:SPDは得票率-4.2% CDU/CSUも得票率-3.3%
NZ:労働党は1議席減 国民党は22議席増
景況と重ねてみると・・・・
日本:回復上昇(与党上昇)
独逸:最悪驀進(与党下落)
NZ:現状維持(与党微減)
・・・・・さっき否定した景気との関係が復活してます。日本は「景気回復のご褒美」、
ドイツは「お灸」、NZは「飽き」ですか。
で野党は、
日本:与党にごっそり取られた(泡沫はあまり変化してない。新党増えたくらい)
独逸:勝ったはずなのに減ってる。減った分は、左派新党に行った?
(与野党とも減ったらそこしかない)
NZ:泡沫に流れていた票が戻ってきた(与党はあまり変化してない)
争点に対する態度は、
日本:はっきりしない
独逸:失言(金持ち優遇税制にするよん)
NZ:大幅減税やるよ!
てなとこですかねえ。はっきりした国民の利益を訴えたとこが増え、そうしなかったとこが減り、
他の受け皿に泡沫群がある。
結論!
日本:郵政賛成票(反対派への批判票?)+これまでのご褒美票で与党圧勝
独逸:景気をどうするか明確に示しきれず、両方敗北
NZ:景気の好調で与党は負けず、税制ビジョンで野党は躍進(両方辛勝)
背景には、「国民に利益を与えるなら勝たせるよ」というごく当たり前の投票行動があった。
以上!
(こんなんでいいのか!? 全然面白みがない・・・)
おわりに
んで、よくいる「日本国民は選択を誤った」だの「愚民だ」だの「催眠術にかけられた」だの
「民主主義は終わった」だの言っている人へ。民主主義ってこんなもんだ!
それが嫌なら寡頭政治や独裁政治を勉強して、出直してきやがれ!
本当に騙されていたんなら、国民全体で責任取るさ。嫌なら、民主主義じゃない、
どっか違う体制の国に亡命しとこう。
僕は独裁政治は否定しないし、優れた指導者がいるなら独裁こそ正義!
ぐだぐだ言う前に、自分の言葉が周囲に届くよう頑張ろうな。